深貝隆志先生からの激励の言葉

腺友倶楽部に一言

昭和大学江東豊洲病院 泌尿器科 教授 深貝隆志

深貝先生今日は設立後1年が経過し、ますます活動を発展なされている「腺友倶楽部」へ一言、激励の言葉を送らせていただきます。
私は泌尿器科の臨床医として、特に前立腺がんの診断、治療に従事しているものであります。現在、前立腺がんの治療は数多くの治療が出現し、どの治療を選択するか苦慮する患者さんも多く見かけます。そのような状況で、我々泌尿器科医は患者さんにできる限りの情報を提示し、それぞれの患者さんのニーズに最も適した治療方法が選択できるように努力しております。しかし、限られた時間で患者さんに与えられる情報量は限られており、勉強熱心な患者さんには満足いただけるだけの説明ができない場合があります。そんな時、ひとりの患者さんから非常に詳細に前立腺がんの事を説明しているサイトがあることをお伺いしました。それが「ひげの父さんのソウルフルワールド」でした。このサイトを拝見して患者さん達がどのような事を悩み、治療に何を期待しているのか垣間見ることができました。そして何よりも驚いたのがその質問への返信、コメントがあまりにも適格であり、わたしはてっきり泌尿器科の専門医のサイトであるかと勘違いしたほどでした。しかし、まもなく、その「ひげの父さん」が前立腺がん患者さんの一人である武内 務さんであることを理解しました。その後、学会等で武内さんとお話しをさせていただくと非常に穏和ではありますが、前立腺がんの知識の普及に情熱を燃やす、「熱い男」を感じました。
その武内さんが昨年ついに前立腺がんでは初めての待望の患者会を作られたと噂で聞きました。これまで女性で最も多い乳癌では患者会や啓発団体が数多く存在するのに、いまや男性のがんでは最も多いがんとなった前立腺がんには患者会も啓発団体もほとんどないのが現状です。患者さんはとかく何事においても不安に思う事が多いところ、患者さん同士が情報を共有することで自分にとって安心と満足感を得ることが多いようです。ただ我々泌尿器科医から見ると、時に患者さん同士の話は正確性に欠けている部分があるのが少々不安になるところです、しかし、武内さんが運営する「腺友倶楽部」からは患者さんの目線で必要とされる正確な情報が得られること請け合いです。先日、京都で開催された第53回日本癌治療学会総会で久々に武内さんにお会いしました。患者さん向けの前立腺がんセミナーを企画するなど、ますます活動を発展させておられるとのことで非常に心強く思っております。「前立腺がん」と診断されたら是非この「腺友倶楽部」のメンバーになられることをお勧めします。
私事ですが私も泌尿器科医の立場で前立腺がんの知識を一般の方、また開業医や行政に広めるために2015年5月に全国の泌尿器科の有志と「NPO法人前立腺がん啓発推進実行委員会(PCEC-Japan)」を設立しました。私自身、臨床では小線源治療、ロボット支援手術を日々、自らの手で行い患者さんを前立腺がんの呪縛から解放できるように努力しながら、前立腺がんの「早期発見適切治療」を目指した啓発活動にも従事しております。まだ「腺友倶楽部」には遠く及びませんが、我々泌尿器科医も前立腺がんの認識を高めるために努力しております。前立腺がんと診断されても安心して患者さんが治療に専念できる社会を目指して今後とも「腺友倶楽部」と共にがんばっていきたいと思います。
今後とも「腺友倶楽部」のますますの発展をお祈り申し上げます。

最終更新日:2015年11月13日